HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンは、子宮頸がん発症の主な原因であるHPV16及び18型並びに尖圭コンジローマ発症の主な原因であるHPV6及び11型の感染を予防するワクチンです。このワクチンは、海外における2万人以上を対象とした臨床試験において、HPV16及び18型に起因する子宮頸がん、外陰がん、腟がん、それらの前がん病変並びにHPV6及び11型に起因する尖圭コンジローマを予防し、また忍容性も良好であったという結果を得ています。
子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんで、主にヒト・パピローマウイルス(HPV)感染が原因で引き起こされることが解明されています。日本においては毎年7,000人の女性が新たに子宮頸がんと診断され、また毎年2,500人が子宮頸がんで亡くなっています。最近では特に20〜30歳代の若い女性で増加していることが問題となっており、その年代の女性では乳がんに次いで2番目に多く発生するがんとなっています。
HPVには100種類以上のタイプがありますが、世界の子宮頸がんの約60-70%はHPV16及び18型が原因となっています。HPV16及び18型は外陰がんや腟がんの原因でもあります。また、尖圭コンジローマもHPVが原因で発症しますが、そのうち約90%はHPV6及び11型が原因となります。
HPVは大部分性行為で感染します。性行為感染症の一種ですが、一般に言う特定の感染者からうつる性感染症とは異なり、性生活のある場合は普通に見られる感染症です。感染しても自覚症状はありません。HPV感染を簡単に言えば「HPV感染は極めて普通に見られ、大部分は自然に治ってしまう感染症で、偶発的に長期に感染が持続する場合に子宮頸がんを引き起こすウイルス感染症です」となります。
そこで、ウイルス感染であればワクチンで予防できないか、という考えがでてきました。現在世界で使用されている4価HPVワクチンは、メルク社(米国)が開発したもので、2006年6月に米国、メキシコで承認されたのを始め、現在までにEU 27カ国、オーストラリア、台湾、カナダ、ブラジル、韓国など85カ国で承認され、さらに多くの国で承認審査中です。
米国においては、疾病予防管理センター(CDC)が定める「子どものためのワクチン(Vaccine for Children, VFC)プログラム」に導入され、メディケイド(低所得者・障害者向け医療扶助制度)受給資格がある子どもたち、保険未加入または十分な保険に入っていない子供たちに無償提供されています。
オーストラリアにおいては、政府によって、12〜26歳までの全ての女性がこの4価HPVワクチンを無償で接種できる予防接種プログラムが導入されています。
日本でも2009年9月に承認され今後子宮頸がんの発症予防に有用なワクチンであると位置づけされるものと思われます。接種の対象者は性交渉前の女子高学年から中高生が対象となると思われ、3回の接種が必要となります、世界各国でもこのワクチンが使用されて日が浅いために効果の持続期間は不明で、現在では最低5年は効果が持続するとされています。このワクチン接種により60-70%の子宮頸がんの患者さんが減少することが期待できます。
情報は日々更新されますので最新情報はMSD社のホームページを参照してください。現在当クリニックではシルガード9を接種しております。
MSDヒトパピローマウイルスサイト
肺炎球菌はヒブ(インフルエンザb型菌)と同様に細菌性髄膜炎を起こす代表的な細菌です。この2種類の細菌で細菌性髄膜炎の原因の約80%を占めます。日本の推計では年間約200人が肺炎球菌による髄膜炎を発症します。原因菌としてはヒブよりも少ないものの重症度はきわめて高くヒブよりもさらに急速に病状は進行するため、治療は困難です。他に中耳炎、肺炎や菌血症(細菌が血液中に入り、全身に細菌が散布される)を起こす主な原因菌です。
2009年3月時点ではアジア・アフリカの国々を含む93カ国で導入されすでに35カ国で定期接種のプログラムに組み込まれています。2000年から定期接種を始めたアメリカでは肺炎球菌による重症感染症は激減しています(図)。
接種回数 6ヶ月未満 4週間以上あけて3回、2ヶ月以上あけて1回 (計4回)
7ヶ月から1歳未満 4週間以上あけて2回、2ヶ月以上あけて1回 (計3回)
1から2歳 2ヶ月以上あけて2回
2から9歳 1回
●HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン(子宮頸がんワクチン)
●小児用肺炎球菌ワクチン:プレベナー(今接種されている高齢者用とは別)